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皮膚科インタビュー

INTERVIEW

皮膚科 診療科長

梅林 芳弘

[専門領域] 各種皮膚疾患の病理診断
悪性黒色腫、有棘細胞癌などの診断、治療
薬疹、接触皮膚炎、蕁麻疹などの診断と治療

皮膚科の基礎となる病理を重視
生物学的製剤・ダーモスコピーによる最新治療から
専門的な
がん治療まで

皮膚科の領域ではこの数年、多くの新薬が出ています。分子レベルでの疾患の解明による生物学的製剤の開発により、尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、掌蹠膿疱症、化膿性汗腺炎の治療が進みました。ボトックスを打たずに塗って治療する腋窩多汗症の薬や、ニキビの薬が何種類も出ています。皮膚科は疾患の数が多く、診断には肉眼所見に加えて病理所見も重要です。ダーモスコピーはその中間の位置する検査方法で、皮膚の内側まで10倍に拡大して透見でき、特に皮膚腫瘍の診断に有用です。

当科では皮膚がんや皮膚リンパ腫に対して、手術から化学療法まで専門的な治療が可能です。鑑別診断や治療で他科と協力・連携し、稀な皮膚科疾患にも対応しています。地域の先生方に情報を提供する勉強会の開催にも取り組んできました。

皮膚科は疾患数が多く、専門性をオールマイティに追求する魅力がある

診療科の分け方として昔、国家試験で必須とされていた内科や外科をメジャー科と呼ぶのに対し、皮膚科はマイナー科に属します。メジャー科では臓器別に、例えば消化器であれば内科的手法を行う消化器内科と外科的手法を行うと消化器外科に分かれています。マイナー科の魅力の一つは1つの臓器を内科的に突き詰めると同時に、外科的手術もできるところです。例えば泌尿器科なら、腎臓や膀胱に対して内科的手法、外科的手法両方を駆使して診断・治療するように、皮膚科では病理診断、内服薬・注射薬に手術といった一般的な方法に加え、ダーモスコピー、外用療法や光線療法といった皮膚科特有の技法まで用い、皮膚という単一の臓器に対してさまざまな面からアプローチします。学生時代、皮膚科や耳鼻科といったマイナー科を実習で回った際、王道にみえるメジャー科とは別に、その臓器に関してはオールマイティな専門的な能力に格好良さを感じました。

疾患の数が多いのは皮膚科の特色です。内臓は外から見えないので、内視鏡などで検査し異常が見つかってはじめて病名がつきます。臓器ごとの疾患の数は100から200ではないでしょうか。皮膚は表から簡単に異常が見えることもあって病名が多く、皮膚科の疾患の数は2000から3000位とも言われています。これだけ疾患の数が多いと、30、40年皮膚科医をしていても、まだ1回も診たことがない病気があるのも興味が尽きない点です。数の多さに辟易するのではなく、むしろわくわくする、といった嗜好の人、経験済みの疾患を一つまた一つと増やしていくことに喜びを感じるコレクターのようなメンタリティの人に向いているかもしれません。

生物学的製剤の登場で進歩する皮膚科の治療

皮膚科の近年の動きとして、生物学的製剤やJAK阻害薬といった新しい治療薬の登場があります。疾患が分子レベルで研究され、これまでになかった機序の薬物が使えるようになったのです。約10年前に尋常性乾癬の新しい治療薬として生物学的製剤が開発された後、掌蹠膿疱症、化膿性汗腺炎などの近縁の疾患にも使われるようになりました。さらにアトピー性皮膚炎や蕁麻疹にも新薬が出ており、今後も対象疾患が増えると予想されます。

生物学的製剤が現れる前、乾癬の皮疹は約75%の改善を見込んでいましたが、今は90%の改善が普通になり、100%、つまり皮疹が完全になくなる状態が期待できるようになりました。生物学的製剤によって、これまでよくならなかったアトピー性皮膚炎も改善しています。アトピー性皮膚炎は軟膏を塗るしかない時代がありました。ステロイドを塗ってもよくならない症例では,逆にステロイド軟膏をやめるという「押してもダメなら引いてみる」みたいな治療法も考案されましたが、私の経験では単純な逆張りでよくなった症例はありません。押してもダメ引いてもダメで長い経過をたどる方がいたことを考えると、今は画期的な治療法があり隔世の感があります。

しかし、新薬は開発コストがかかるため、生物学的製剤は高額療養費の対象です。仮に患者さんの年収が約370から770万円とすると、高額療養費でひと月の上限額約8万円になります。また,生物学的製剤の一部やJAK阻害薬は大学病院など承認された施設でしか使えないので、平日の午前中に大学病院に通院する負担も生じえます。医学的問題とは別の、これらの状況をも考慮して対応しています。

また、生物学的製剤の中には副作用としてアナフィラキシーが生じる可能性があるものがあり、医療機関においては適切に対応できる体制が求められています。さらに薬自体も高額なので,たくさんの患者さんが利用されて在庫が動くようでないと、医療機関にとっても経営的な負担になりますから、どの施設にでも揃っているという訳にはいかないでしょう。当医療センターでは、薬剤部の協力で新しい生物学的製剤が世に出たら、とにかくまず採用して使えるようにしています。生物学的製剤を使う新しい治療をご希望の患者さんには、当科にご紹介いただければと思います。

皮膚がん・皮膚リンパ腫の治療を得意としている

当科では皮膚悪性腫瘍の治療に力を入れています。皮膚がんには基本的に手術を行い、術後に新しい化学療法薬を使うことがあります。一方、皮膚リンパ腫は基本的に血液のがんなので治療は手術ではなく抗がん剤を用いた化学療法が主になり、慣れていないと手強い病気です。皮膚がんの外科的治療を行っている施設でも、皮膚リンパ腫は全くジャンルが違いますから、その治療をも得意としているとは限りません。

当科は、皮膚リンパ腫を専門としていた前任の教授から引き継ぎ、加藤雪彦教授が皮膚リンパ腫を含めた皮膚悪性腫瘍の治療を精力的に行っております。検査して診断がついた状態だけでなく、疑いの段階でもご紹介いただいています。

日本アレルギー学会の教育研修施設

当院は日本アレルギー学会の教育研修施設です。加藤教授と私は専門医として若い先生方に皮膚アレルギーの研修、指導を行っています。アレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎や蕁麻疹は生物学的製剤など新規薬剤の対象疾患です。アレルギーの原因を調べる段階からお気軽にご紹介ください。

医療センターとしての強みを活かし、
他科との連携で
正確な診療を提供

患者さんにもっとも適した医療を提供するため、当院の他の診療科と連携して診断し、治療しています。例えば、乾癬は1、2割の方に乾癬性関節炎による関節痛を併発します。症状が乾癬を原因とするのか、まったく違う関節リウマチや加齢による変形性関節症から来るものなのか、関節症状を鑑別する必要があるのです。関節症状に対して内科ではリウマチ科、外科では整形外科と連携して診断・治療しています。他の例をあげれば、皮膚リンパ腫など皮膚悪性腫瘍の化学療法は臨床腫瘍科と密に連携しています。皮膚がん切除後の再建では形成外科にお願いするケースがあります。患部が陰部であれば婦人科、部位によって消化器外科や泌尿器科とも連携しています。

希少疾患としては遺伝性血管性浮腫があげられます。遺伝性血管性浮腫はむくみによって気道が塞がれ、窒息にいたる病気です。あるとき突然、人相が変わるほど顔面が腫れて息苦しいという症状が出ます。気道閉塞に対しては救急科や耳鼻科に対応していただき、その後の再発を防ぐ治療を皮膚科で行います。遺伝性血管性浮腫の診断と治療を行っておりますので、顔面が突然腫れて疑わしいという方はご紹介ください。

肉眼所見と病理が皮膚科の診断に重要

皮膚疾患は、肉眼的所見に加え、触診し、病理標本を顕微鏡で観察することで、病態が理解できるのです。当科は皮膚科の病理診断を専門としており、病理の先生と毎週カンファレンスを行うほか、診断を確実にするために自分たちで病理標本を見て検討しています。皮膚病理がわからないと、そもそも皮膚病変を正確に記載することもできませんから、皮膚科医には皮膚を肉眼で見て病理像を想像する能力が必要です。病理学的な知識は専門医試験でも必ず問われます。

肉眼所見と病理診断をつなぐ道具として注目されているのがダーモスコピー(検査)です。ダーモスコープは病変を10倍に拡大しますが、単なる虫眼鏡ではなく、乱反射を防いで皮膚の内側、真皮の上の方までの所見が得られる器具です。ダーモスコピーによって皮膚を切らなくても迅速に病理像が想像できます。皮膚病理やダーモスコピーに習熟し診断技術を高めることが皮膚科の専門的な治療につながります。

皮膚科の専門性で地域に貢献したい

当科では1週間の点滴などで短期の入院が必要なケースに対して、原則的に退院後は地域の先生方にお返ししています。乾癬やアトピー性皮膚炎で生物学的製剤による治療を行う場合も同様の対応が可能な場合がありますのでご相談ください。皮膚科からのご紹介が多いですが、他科からも紹介状でご依頼いただいています。

地域の先生方からご紹介いただいた症例の勉強会を行っています。よくわからない謎の病気としてご紹介いただいた疾患が、当科での精査により稀な疾患であることがわかったということがあります。こうした症例を毎年いくつかピックアップして、地域の先生方との勉強会を設けてフィードバックしています。製薬メーカーは各社で最先端の生物学的製剤による乾癬治療の講習会を立ち上げていますが、生物学的製剤は日本皮膚科学会の承認施設以外では使えないので、情報が行き渡っていない面もあります。皮膚科治療の最先端の知識をご紹介する目的で、地域の先生を対象とした小さな講演会を月2回程度行っています。

地域の先生方から患者さんをご紹介いただきましたら、皮膚科の専門性を活かした診療を提供したいと考えています。生物学的製剤などの最新治療をはじめ、希少疾患の診断・治療、皮膚科領域のがん治療も可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

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