病院長インタビュー
INTERVIEW
東京医科大学八王子医療センター
田中 信大 病院長
東京医科大学八王子医療センターは1980年(昭和55年)に開院した多摩医療圏の中核病院。三次 救命救急センター、地域災害拠点病院、臓器移植医療拠点病院、がん診療連携拠点病院、感染症指定医療機関、地域医療支援病院の指定を受けています。2023年10月に、循環器内科 診療科長であった田中信大医師が新たな院長に就任し新体制となりました。
循環器内科の診療科長を務めていた際には、チームの協力を奨励し、科全体を活気づけ、スタッフが働きやすい環境を整えることを通じて、地域における医療への貢献に尽力しました。現在、この信念は科を越えて広がり、病院長として病院全体の向上に取り組む情熱を抱いています。
当院は名前に東京医科大学を冠していますが、その役割は大学病院としてのみに留まらず、地域医療を広範に支える役割も果たしています。通常、大学病院は高度な医療、新たな治療法をより重症の患者さんに提供することが期待されます。しかし、当院には八王子市の住民が東京の23区に行かなくても、高度な医療や救急医療だけでなく、広範な治療を安心して受けられる場所としての重要な役割が求められています。
私が関わってきた循環器領域は、新しい治療法が必要な場合が多いです。そのため循環器内科においては地域医療と高度な治療を提供するという大学病院の両方の方向性を追求することが比較的シンプルに実施することができました。しかし、病院全体としては36の診療科があり、科や医師ごとに多様な指向性があります。それでも全体として最終的に同じ方向を見られるようにまとめるのが、病院長の役割だと考えています。目の前の患者さんだけでなく、将来の患者さんのための研究にも専念し、最終的には地域社会に貢献する病院を築き上げたいと思っています。
当院の軸となるのは、救急医療、移植医療、がん治療、災害や感染症の対策です。当院のこれまでの歩みを大切に維持し、よりよい病院となるよう力を尽くしてまいります。
八王子医療センターは三次救急病院です。現在、三次救急に対応できる施設は八王子市では当院のみであり、南多摩エリアでも数が少ない状況です。三次救急で断られたら受けられる病院はありません。八王子市に住む約56万人の命を守るためには、患者さんを断らない体制づくりが必要です。
高齢化は地方にいくほど進んでおり、循環器疾患、血管疾患、整形外科疾患、がんの患者さんが増加します。その中でも循環器疾患、特に心筋伷塞の場合は、発症から90分以内、治療の開始が早ければ早いほど予後が良いです。東京都の山間部は当院まで救急車で30分以上、当院が受け入れられず都心に向かえば、1時間半ほどかかるでしょう。そのような患者さんを当院で確実に受け入れられる体制づくりは、病院長になって特に力をいれている部分です。今後、常に超重症の緊急疾患も受けられるシステムを整えていきたいと考えています。
現在、三次救急の応需率は約95%です。同時に2件の要請、あるいは手術中などのこともあり、かなり受入れが大変な状況のときもありますが、救命救急センターのスタッフの頑張りにより維持しています。
最近、東京都がドクターヘリのシステムを東京西部に確立しようとしています。多摩エリア山間部は都心から遠いため、東京都として地域医療をカバーするための動きです。当院も協力施設であり、当番日にはヘリポートに当院医師が待機しています。当院の先は山間部であり、そのエリアの救急患者さんを少しでも救いたいと思います。
当院は長い歴史の中で、積極的に移植医療に取り組んできました。移植症例が数多くあり、地域だけでなく遠方からも患者さんが当院を頼りにして来院されます。これからも、移植医療は当院の中核として強力にサポートし続ける方針です。当院で移植が根付いている背後には、臓器提供者の数の増加があると信じています。実際に移植によって救われた患者さんたちを証人として持ち、臓器提供への意識を高めることができているのだと思います。
当院の移植手術は主に腎臓と肝臓に焦点を当てていますが、今後は腎臓・膵臓同時移植など、幅広い症例に対応していくことが期待されています。我々は、これからも移植医療の発展に貢献し、新たな命への架け橋となっていきたいと強く思っています。
近年、がん治療の進歩が急速に加速しており、患者さん個々に合わせた治療選択が可能になっています。臓器にがんが発症すると、必ずしも特定の治療法が適用されるわけではなく、個別化治療が国際的なトレンドとなっています。当院はがん診療連携拠点病院として、医学の最新進歩に迅速に対応し、患者さんに高水準の治療を提供できる環境を整えています。
2021年4月1日、当院は「がんゲノム医療連携病院」として認定され、遺伝子や免疫に基づいた専門的な診断と治療を提供しています。これからも、抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬の効果を評価し、適切な治療への導き手を差し伸べる役割を果たしてまいります。
当院は感染症指定医療機関としてコロナ禍で注目されましたが、同時に災害対策にも積極的に取り組んでいます。我々は様々な災害や予測不可能な状況に対処する体制を整備し、地域に医療と支援を提供する使命を担っています。
COVID-19は世界的な影響をもたらしましたが、当院は過去10年以上にわたり新型インフルエンザなどにも初期から対応してきました。未知の感染症が地域で発生すれば、我々は全力で対処します。また、災害対策の一環として、防災訓練では化学テロにも備えて訓練を実施しています。
さらに、災害対策においては、地震のような同時多発的な状況に備えています。私自身、子供の頃から東京地震の可能性について聞かされており、神戸の病院での勤務直後には神戸地震も経験しました。東日本大震災の際には東京も揺れ、災害は常に現実的な脅威として感じています。これらの経験から、コロナ禍や震災を通じて、病院としての対応策を練る必要性を強く感じています。
このためには、職員と共有できる危機感が非常に重要です。災害が発生した場合、病院長や災害対策担当者が不在であっても、対処できる体制が必要です。さらに、当院だけでなく、周辺の医療機関や行政と協力し災害対策をより確実なものへ進めていきたいと考えています。
研修病院として、15人の定員に対して毎年3~4倍の応募があります。当院に来る医師はモチベーションが高く、初期の2年間で多くの内容を勉強したいという意欲のある医師が集まっています。初期研修の先生には、なるべく救急科を経験していただけるようにしています。当院は症例数が多いのでより経験値が上がるでしょう。
病院としてもやる気を促す雰囲気づくりが大切です。向学心のある医師が集まると良い循環が生まれ、翌年も倍率が上がります。その上で、どの診療科を回るかをはじめ、将来の配属科とは異なる診療科の勉強や、途中での変更も理由があれば認めており、研修医の自由度を高くしています。研修医も戦力としてベッドサイドで学ぶ機会が多いのも、当院の特徴です。
国はプライマリーケアができる医師の育成を目指す方針です。イギリスのように、病院とプライマリーケアを分けて、医療機関の機能を分担化する流れがあります。初期研修で様々な経験をしておけば将来役立つということは、私自身も実感しています。
今後、病院の機能がさらに専門化していく方向に進んでいきます。各医療機関は、役割分担を考慮しなければなりません。救急患者さんの受け入れには病床数に限界があり、新たな救急ケースや重症患者さんの治療には安定した状態にある患者さんを他の医療機関やクリニックの医師に引き継ぐ必要が生じます。また、患者さんが再び病状が悪化した際にも円滑な医療提供ができるように、地域医療連携の枠組みを更に整えたいと考えています。
このエリアは、都心のように大学病院がたくさんあるわけではありません。当院は大学病院だから、と構えずに、患者さんや地域の先生に寄り添いたいと思います。市民のための病院として、地域の医療の継続性を確保していきたいと思っています。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
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東京医科大学八王子医療センター
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TEL: 042-665-5611 (代表)
平日:9時~17時
第1・3・5週 土曜日:9時~13時
休診日:土曜日(第2・4週)、日曜日、祝日、4月の第3土曜日(大学創立記念日)、年末年始
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