栄養管理科インタビュー
INTERVIEW
栄養管理科 科長
小林 敏倫
栄養管理科は患者さんに、栄養面でのケアを行う部門です。近年、急性期や周術期での栄養ケアの重要性が注目され、栄養関係の診療報酬が改定されて来ています。栄養管理科は医師、看護師、コメディカルなどの多職種と連携し、患者さんを栄養面から支えます。当院の栄養士は糖尿病療養指導士、腎臓病療養指導士、がん病態栄養専門管理栄養士をはじめとした専門資格を取得し、入院外来での栄養相談も行っています。
周術期の栄養管理によって術後の回復が早くなるなど、栄養状態は外科治療の予後にも影響することが知られるようになりました。診療報酬改定にて2020年「早期栄養介入管理加算」、2022年「周術期栄養管理実施加算」が新設され、当院においても取り組みを開始しています。
早期栄養介入管理は、2021年5月からICUより開始し、諸事情で一時中断しましたが2022年8月より再開、2022年12月からは救命病棟も開始しています。入室から48時間以内に栄養状態を評価し、腸管使用が可能な場合は、早期の経腸栄養の開始を目指します。全身の免疫細胞の約7割が腸にあり、腸管を使用することで免疫の向上やバクテリアトランスロケーションの防止が期待されることが背景にあります。管理栄養士が特定集中治療室や救命病棟に常駐し、医師、看護師、コメディカルと連携しながら適正な栄養管理を行います。
周術期栄養管理は2023年の5月から、上部消化管と膵臓の手術の患者さんを対象に取り組みを開始しています。従来は入院後からの栄養介入が中心でしたが、手術が決まった時点から管理栄養士が、必要に応じて栄養相談を実施することで、外来時からの栄養介入を行うことができるようになりました。
具体的には、手術が決定したタイミングで、栄養スクリーニングを実施し、栄養リスクのある患者さんに対し、栄養相談を行い日頃の食事状況を確認後、入院前に少しでも栄養状態を上げられるような方法について提案します。入院時には再度栄養スクリーニングを実施し、手術の忍容性を評価し、万全の体制で手術に臨めるように栄養面でサポートします。
術後には食事の摂取状況や栄養状態をアセスメントし、必要に応じて退院に向けての食生活のアドバイスや退院後の外来フォローを行います。
今後は管理栄養士の配置をさらに拡充し、周術期の患者さんの対象範囲を広げていきたいと考えています。
患者さんの入院時には栄養スクリーニングを実施し、病状や栄養状態・喫食状況など総合的に判断し、特別な栄養管理が必要とされる患者さんに対しては病床訪問を行い、栄養補給法や食事内容について提案しています。病棟のスタッフとともに週に1回、改変MUSTによる栄養スクリーニングを実施し、患者さんの栄養状態に関してカンファレンスを行っています。
さらに重点的な栄養サポートが必要な患者さんについては、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師、言語聴覚士など多職種で構成されているNST(Nutrition Support Team)に依頼しチーム回診を行っています。今後はNSTの有資格者を増やし、病棟単位でNSTが行えればと考えています。
糖尿病や腎臓病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病は、食事を始めとした日々の生活習慣で改善できることも多くあります。当科では、まず患者さんの話に耳を傾けて生活状況をよく把握した上で、その方のライフスタイルに合わせて、実現可能な目標について話し合い、少しずつ食生活習慣を改善して行けるようにサポートするよう心掛けています。
西東京は臨床糖尿病支援ネットワークもあり、糖尿病のチーム医療が根付いている地域です。西東京糖尿病心理と医療研究会などを通して、糖尿病患者さんの心理について色々学び栄養相談にも活かしています。西東京糖尿病療養指導士、日本糖尿病療養指導士の有資格者も多く在籍しています。
また、糖尿病だけでなく、腎臓病療養指導士、心不全療養指導士・がん病態栄養専門管理栄養士・日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士・NST専門療法士など様々な資格も有しています。
栄養相談の件数は年々増加傾向でありましたが、コロナ禍や産休による人員不足などもあり減少し、昨年は2602件でした。今年度は管理栄養士の増員もあり体制を整え、栄養相談のご要望に応えていきたいと思っております。
地域の先生が患者さんに栄養相談を受けてほしい場合、「栄養相談希望」で当院をご紹介ください。栄養相談を行う場合には医師の栄養指導指示が必須となるため、患者さんに当院を受診していただき、担当の医師に栄養指導指示箋を処方していただく必要があります。
10数年前までは、「管理栄養士はずっと地下の事務所に籠りきりで顔が見えない」など揶揄されることも多かったのですが、2006年栄養管理実施加算、2010年栄養サポート体制加算と、入院の栄養管理体制が整うに従って管理栄養士の病棟業務が増え、徐々に顔が見える存在になってきています。
給食業務は日清医療食品株式会社に委託し、医師の指示に基づき患者さんの病態や年齢、摂取状況に合わせた食事を提供しています。季節を感じる行事食や、一般食の患者さんには選択食を実施しています。栄養管理を行う中で、おいしいものを食べたいという患者さんの要望は多く、患者さんからの意見を大切にし、委託会社に情報を伝達して食事の改善に努め、互いに共同しながら栄養・食事の面で患者さんをバックアップしています。
食事の状況を確認するために病室訪問をすると、患者さんからご相談を受けることがよくあります。患者さんから「栄養士さんとお話しできてうれしかった」と言われたりするととても嬉しく思います。今後も積極的に病室に伺い、患者さんが手術や病気に対して前向きに向き合えるように、気持ちのケアを意識した栄養管理を行いたいと考えています。
また、当院では、八王子のパン屋さんと協力し、生活習慣病でお悩みの方でも安心して食べられる、高繊維や低糖質、低たんぱく質、減塩などの様々な種類のパンやお菓子の開発にも取り組んでいます。
当科の管理栄養士は現在13名となりました。管理栄養士は、急性期・周術期・栄養サポートチーム(NST)や病棟の栄養管理など、様々な分野で重要な役割を担っており、管理栄養士だけでなく多職種でのチーム連携が必要な時代となってきています。その中でも栄養のスペシャリストとして活発な意見交換が行えるよう、栄養だけでなく病態の知識の研鑽も行ってまいります。栄養相談においても、患者さんのエンパワーメントが引き出せるような相談を行い、患者さんの食事療法をサポートしていきたいと思います。 コロナ禍で中止していた腎臓病教室も10月より再開され、2月には市民公開講座を行う予定です。地域にも積極的に貢献していきたいと思っていますので、 対象の患者さんへの参加のお声かけをお願い致します。
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休診日:土曜日(第2・4週)、日曜日、祝日、4月の第3土曜日(大学創立記念日)、年末年始
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