
小児科
INTERVIEW

小児科 診療科長
堤 範音
[専門領域]]小児一般、小児消化器、小児肝臓、小児内視鏡診断・治療
東京医科大学八王子医療センター小児科は、八王子市の小児三次救急を担う地域の中核施設です。2026年1月に小児消化器・肝臓疾患の専門家として堤範音先生が科長として赴任し、小児内視鏡検査を含む専門外来をスタートしました。小児科医が麻酔管理から検査まで一貫して担う慎重な体制で、地域の先生方からのご相談を幅広く受け付けています。

医療従事者のいない家庭で育ち、当初は小学校の先生になるつもりでした。
高校2年生のときに父が狭心症になったことをきっかけに医師を志し、大学入学時は心臓外科を目指していました。
医学部で学ぶうちに「未来ある子どもが健やかに育つ手助けをしたい」という気持ちが芽生えましたが、病気で苦しむ子どもを目の前にして耐えられるか、という迷いもありました。大学3年生のとき、小児外科の先生に「子どもに関わるのは亡くなった時に辛くないですか」と直接尋ねると、返ってきたのは「いや、子どもって意外と死なないんだよ」という一言でした。
大人と違って糖尿病や高血圧の合併症が少なく、原因となる病気を治せば回復しやすい——その言葉が、小児科医を選ぶ後押しになりました。卒後は沖縄の子ども病院で研修し、以来ぶれることなく小児科医の道を歩んでいます。

私の診療ポリシーは「チャイルドファースト&ワークライフバランス」の二つです。
チャイルドファーストとは、保護者の言葉より先に「この子にとって何がよいか」を考えることです。
小児科の基本姿勢として当然のことですが、同時に「親がつぶれたら子どもを守れない」と保護者の方にも伝えています。
家族全体を視野に入れることが、子どもにとっての支えになるからです。
医療者も同じです。全力で働いて倒れるより、余裕を残して長く続ける方が多くの患者さんを救えます。
沖縄出身で家族を大切にする文化が自分の軸にあり、科長として「必要なときはみんなで協力し、休むときはしっかり休む」ことをスタッフに伝えています。
私の座右の銘は沖縄の言葉「なんくるないさー」です。「まあなんとかなる」という楽観的な響きを持ちますが、本当の意味は「しっかり努力していれば、くよくよしなくても道は開ける」という信念です。何もしていない人には使えない言葉で、きちんと準備した上であまり力まずにふわっとうまくいく。そういう感覚を大切にしています。
当院は八王子市からの依頼を受け、小児救急を病院の重要方針の一つに位置づけています。夜間の小児救急は市内で輪番制(奇数日:東海大学八王子病院、偶数日:当院)ですが、三次救急に対応できるのは市内では当院のみです。
そのため三次救急の症例は24時間オンコール体制で救急医とともに対応しています。
当科の医師は全員、新宿の東京医科大学病院から派遣されており、本院でしっかりした研修を積んだ医師が揃っています。
全員がPALS(小児二次救命処置)の資格基準に準拠したシミュレーショントレーニングを実施しており、日中に救急搬送された患者さんはディスカッションしながら診察し、若手の指導も行っています。
当院は地域に根ざした医療機関であり、免疫・神経・内分泌・アレルギーなどの専門外来は東京医大本院から非常勤医師が担当しています。2026年1月に私が赴任し、小児消化器・肝臓疾患の専門外来を開設しました。
この分野を専門とする小児科医は国内でも多くなく、地域の医師会の先生方からも期待の声をいただいています。
小児の内視鏡検査は、小児科医が静脈内鎮静・鎮痛の管理と検査の両方に精通している必要があります。成人用の消化器内科とは異なる専門性が求められる領域です。
八王子市の15歳以下の人口は約6万人弱で、そのうち消化器内視鏡検査が必要な子どもは相当数いると考えられます。専門的な治療が必要な患者さんの受け皿となりつつ、検査後は安定した患者さんを地域の先生にお戻しする形が基本です。
日頃はかかりつけ医を受診し、必要なときだけ当院を利用する「二人主治医制」を目指しています。
紹介いただく際は「検査してください」という依頼よりも「検査した方がいいでしょうか」というご相談が助かります。
麻酔・検査には侵襲性とリスクが伴うため、メリットとデメリットを患者さんご家族と丁寧に話し合う必要があります。
地域の先生から「こういう検査があるみたいだけど受けてみるか聞いてみよう」という形で来院いただく方が、ご家族との合意形成がスムーズです。

内視鏡検査の紹介目安となる症状を「レッドフラッグス」と呼びます。上部消化管(口から十二指腸)では、持続する嘔吐・血性嘔吐・みぞおちの痛み・食欲不振・胃粘膜の荒れが代表的です。下部消化管(大腸まで)では血便・持続する下痢・腹痛が目安になります。子どもに特有の指標として、身長の伸び悩みと体重減少は特に注意が必要です。
器質的疾患を疑う警告兆候(Red-Flag sign,Alarm sign)
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家族歴(炎症性腸疾患、胃・十二指腸潰瘍) |
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持続する右上・下腹部痛 |
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嚥下障害・嚥下時痛 |
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繰り返す嘔吐 |
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吐血・下血 |
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夜間の下痢 |
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関節痛 |
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肛門病変(痔瘻・肛門周囲膿瘍) |
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体重減少・成長障害 |
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思春期遅発 |
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不明熱 |
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就寝中に覚醒するほどの痛み |
腹痛は心理的な要因によることも多くあります。
ただし、心理的背景の影に器質的疾患が潜んでいる場合もあります。
症状が続く場合に検査で「怖い病気ではない」と分かれば、ご本人もご家族も前向きになれることがあります。
一方、「検査で内臓がきれいだったら学校に行ける?」と聞かれて行けないと答える場合は、
検査を行う意義を改めて検討する必要があります。

内視鏡検査では、急変時の処置に対応できる小児科医が静脈麻酔をかけて状態を観察し、別の小児科医が検査を担当します。
鎮静にはベンゾジアゼピン系のミダゾラム、鎮痛にはケタミンまたはソセゴンを使用します。
気管内挿管は行わず、呼吸抑制などの合併症に対応できる人員配置で慎重に実施しています。
内視鏡検査で見つかる代表的な疾患にクローン病と潰瘍性大腸炎があります。
体重が増えず腹痛が続いていたが血便もなく精神的な原因と見られていたところ、内視鏡でクローン病と判明したケースがありました。好酸球性食道炎・好酸球性腸炎といったアレルギー性腸管炎症も内視鏡で発見できます。
検査は基本的に入院で行います。胃カメラは1泊(前日入院・翌朝食前に実施)、大腸カメラは2泊(前日夜から当日昼まで下剤服用後、午後に実施。鎮静薬使用のため当日入院継続)です。

親世代の感染率低下に伴い、子どものピロリ菌感染は減少傾向にあります。
ただしアジア全体ではまだ有病率が高く、近年改めて注目されています。子どものピロリ感染は成人と異なり保険適用外ですが、感染期間が短いほど将来の発がんリスクが下がると考えられており、必要に応じて検査しています。
ピロリ菌の検査法には、血液による抗体検査・便中抗原検査・尿素呼気試験などがありますが、当科では基本的に内視鏡検査で行います。治療には抗生物質と制酸薬の併用が一般的です。
耐性菌の増加を背景に、胃組織を採取して培養する組織培養検査を行う場合もあります。
腹痛や嘔吐・血便・体重減少でお困りのお子さんがいらっしゃれば、ぜひご紹介ください。
特に「どんどん痩せてきている」場合は、命に関わる器質的な問題がないか調べることをお勧めします。
お腹の症状で来院されたお子さんと保護者の方に、器質的疾患があれば必要な治療へつなぎ、疾患がなければ「検査してよかった」と感じていただける状況を目指しています。
地域の先生方、どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
お問い合わせ
医療機関からのお問い合わせは、医療連携室で承っております。
受付時間をご確認の上お問い合わせください。
東京医科大学八王子医療センター
総合相談・支援センター医療連携室
TEL: 042-665-5611 (代表)
平日:9時~17時
第1・3・5週 土曜日:9時~13時
休診日:土曜日(第2・4週)、日曜日、祝日、4月の第3土曜日(大学創立記念日)、年末年始
患者様に関するご相談は、お電話でお問い合わせください。
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